化石燃料

不確実性を煽るのはやめよう:なぜアジアはLNGトラップを避けるべきか

このレポートでは、世界の電力セクターのガスインフラへの投資に伴う長期的なリスクを探ります。このレポートは、欧米のガス発電所の見通しに焦点を当てた2021年のレポート『再考を要するガス投資』の続編で、アジアに焦点を当て、変動の激しい液化天然ガス(LNG)市場からの影響を受けやすくなっている当該地域の国々に関わる極端なリスクについてまとめています。

アジアにおけるLNGの経済的意義は崩れつつある

世界の液化天然ガス業界は、長年、アジア需要の堅調な伸びを当てにして世界的な拡大計画を正当化してきました。しかし、世界のLNG市場が激動したことで、こうした期待は後退しました。持続的な価格高騰と限られた供給量をめぐる競争により、LNGに対する経済状況が損なわれ、アジアでのLNG販売が減少しています。

レポート『褐炭、グリーンウォッシュー 水素エネルギーサプライチェーンプロジェクトがもたらす真の排出のインパクト』

「クリーンエネルギー」と銘打たれているものの、水素エネルギーサプライチェーン(HESC)がパイロット段階で出した排出物のうち、二酸化炭素回収・貯留によって埋められたものはありません。HESCプロジェクトでは、フル生産時に年間180万トンの排出量を削減するという主張とは裏腹に、排出量を年間最大380万トン増加させる可能性が高いのです。

世界的なエネルギー危機でフィリピンでのLNG計画に支障か

フィリピンは極めて不確実な時期に世界のLNG市場に参入しようとしています。ロシアのウクライナ侵攻の影響もあり、世界のLNG供給は制限され、LNG価格は史上最高値を更新し続けています。

2022年のアジアのLNG需要の減少が産業成長の課題を浮き彫りにする

液化天然ガス(LNG)業界は長年、アジアが信頼でき、急速に成長する顧客になるだろうと想定してきました。しかし、世界のガス市場が乱高下した1年で、この前提に疑問が呈されることになりました。欧州でのロシアのパイプラインガスをLNGに置き換える動きにより、2022年の価格は過去最高を記録しました。これを受け、アジアのLNG需要は7%減少し、2015年以降初めて年間需要の減少を記録しました。

世界のLNG見通し、バングラデシュの先行きは厳しい

世界の液化天然ガス(LNG)市場は、極めて不安定な状況にあります。2021年冬以降、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、LNG価格は過去最高値を更新する急騰を繰り返しています。バングラデシュは、ガス需要の20%を液化天然ガス(LNG)の輸入に依存しており、法外な価格を支払うか、購入を断念せざるを得なくなり、燃料と電力が不足しています。

LNG価格の高騰で輸出企業が市場に参入する中、アジアのバイヤーは出口を探す可能性がある

液化天然ガス(LNG)市場のボラティリティは、すぐには解消されないでしょう。2022年4月、世界銀行は、世界のガス市場の逼迫と動揺が何年にもわたって続くと警告しました。この点を強調するかのように、ロシアはその翌日、欧州連合2カ国へのガス供給を停止し、世界のガス価格に新たな衝撃を与え、モスクワがガス輸出を武器にすることを示唆しました。

今はアジアにLNG輸入基地を増設すべき時ではない

世界の液化天然ガス(LNG)市場は極端な変動期を経験しています。多くの人はその原因がロシアのウクライナ侵攻にあり、きっとすぐに価格は安定する、と思うかもしれません。しかし、予測不可能性とエネルギー不安はLNG市場の基本的な特徴であり、一時的なものではありません。LNGの価格変動は、ロシアの侵攻のかなり前から始まっており、事態が収まれば予期しない長期的な影響が及ぶことになります。

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