COP28 ファイナンス・デー、気候基金へ125億ドルの誓約を獲得

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COP28 ファイナンス・デー、気候基金へ125億ドルの誓約を獲得

ドバイで開催されているCOP28の5日目は、議長のスルターン・アル・ジャーベル氏が化石燃料の段階的廃止に反対する発言をしたことが報じられ、先行きが不透明な幕開けとなった。しかし、その日の議論では気候基金に関して大きな進展が。40以上の資金拠出に関する誓約が実現している。

2023年12月12日 – Energy Tracker Asia

最終更新日:2024年6月10日

第28回国連気候変動枠組条約(UNFCCC)締約国会議(COP28)の5日目は、「金融、貿易、ジェンダー、説明責任」がテーマとなった。しかし、前日に英『ガーディアン』紙がCOP28の議長であるスルターン・アル・ジャーベル氏の11月21日のオンライン会議での発言について記事を掲載したため、雲行きの怪しいスタートに。

『ガーディアン』紙によると、アラブ首長国連邦の石油最高責任者であるアル・ジャーベル氏は、気温上昇を1.5℃に抑えるために化石燃料の廃止を要求するのは「科学的根拠がない」と発言し、さらに、石炭、石油、ガスの段階的廃止は世界を「洞窟に逆戻り」させると述べたという。世界的な批判を受け、アル・ジャーベル氏は月曜日に発言を撤回し、「我々は科学を信じ、尊重する」とした。

COP28:気候資金の調達に関する誓約

そうした中、COP28では、気候変動資金調達の目標に関する決定を含む重要な作業が進められた。

少なくとも40以上の気候資金拠出に関する誓約がなされ、緑の気候基金(Green Climate Fund)への資金補充の誓約額が、これまでの誓約額を上回った。第2次増資の誓約総額は過去最大の約125億米ドルとなった。

「損失と損害」基金の設立に関しても、約7億2,000万米ドルが誓約されている。「損失と損害」とは、防ぐことも適応することもできない気候変動による被害を指し、「損失と損害」基金は、気候変動に脆弱な国々が気候変動による被害に対処するための資金となる。気候変動の被害を最前線で受けている国々が、数十年にわたって経済先進国に働きかけを続けた結果、先進国が資金を拠出しこの基金を設立することが昨年のCOPで合意された。「損失と損害」基金は、開発途上国の気候正義にとって、不可欠なものだ。

少なくとも2.4兆米ドルが必要

COP28での気候資金の拠出誓約は期待を持てるものである一方、中国を除く開発途上国には、2030年までに少なくとも2.4兆米ドルが必要だとされている。さらに、現在54の途上国が債務危機に陥っており、経済的困難が、経済発展とネットゼロへのエネルギー転換への障壁となっている。

国連開発計画(UNDP)の報告書は、世界の最貧国の少なくとも50%は、体系的な発展が大規模な危機に陥る事態を回避させるために、今すぐ債務救済が必要である、と警告する。

先進国、民間セクター、国際開発金融機関、ドナー、慈善団体などのすべてのステークホルダーに求められる行動を包括的に分析したロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの気候変動ファイナンスの専門家グループは、全面的な努力と改革があれば、2030年までに開発途上国のために数兆ドルの資金を引き出すことは可能であるとする分析結果を発表している。

気候変動に対処する金融システムの改善

気候変動に対処するために、金融システムを改革することを支持する先進国は増えている。今後の債務改革についての協議も必要だ。

COP28の月曜日の議論では、世界銀行、アフリカ開発銀行、米州開発銀行、欧州復興開発銀行といった国際開発金融機関や各国政府から、異常気象が発生した場合の各国の債務支払い保留についての支持が集まった。

日本とフランスは、国際通貨基金(IMF)の特別引出権(SDR)を、気候変動と開発のために再充当するためにアフリカ開発銀行を利用するという以前の提案へ支持を表明した。SDRは、IMFが保有する緊急時の外貨準備で、めったに使用されることはなかったが、新型コロナウイルスによるパンデミックの際に一部が使用されている。SDRを開発銀行が使用できるようにすれば、途上国の気候資金を強化することが可能となる。

経済先進国と発展途上国の確執

先進国の中には、1,000億米ドルの気候資金拠出について、その義務を果たしたと主張する国もある。しかし、途上国はその主張の根拠となるデータの欠如に疑問を呈し、反発している。

また、発展途上国は、負債を増やさない方法で資金を受け取ることを望んでいる。経済先進国からの資金を調達するほど、途上国が債務を抱え続けるような負債の罠を避けるためだ。

金融の流れと世界の気候変動抑制目標

パリ協定第2条(1)についても激しい議論が交わされている。第2条(1)は、各国政府に対し、「資金の流れを温室効果ガスの低排出型かつ、気候に対して強靱な発展に向けた方針に適合させること」ことを求めている。これは、地球温暖化を産業革命以前の気温水準の1.5℃以内に抑えることを含む、協定の適応と緩和の目標を達成するための前提条件だ。

先進国の政策決定者は、この問題に懸命に取り組んでいると主張するが、発展途上国はそれを否定している。発展途上国は、先進国が気候資金への拠出義務から注意をそらすためにそのように主張していると見ており、実施された際には資金がさらにグローバル・ノースの国々に流れるのではないかという懸念も表明している。

中国・インドにも拠出義務はあるか?

2023年のCOP28のホスト国であるアラブ首長国連邦(UAE)は、「損失と損害」基金に1億米ドルを拠出することを表明した。

他にも、ドイツ(1億ドル)、英国(7,500万ドル)、米国(2,450万ドル)、日本(1,000万ドル)などが基金への最初の誓約を行った。今後、化石燃料生産国でありCO2多排出国であるオーストラリアなどの他の経済先進国が基金への拠出誓約を表明するよう、さらに圧力が高まることが予想される。

中国とインドが気候変動基金の対象となるべきかどうかについても議論が行われた。中国とインドは、自国にも気候変動基金からの財政支援を必要とする脆弱な地域社会があると主張する。

しかし、米国などの国々は、中国とインドも、気候変動対策のために大幅な排出削減を行い、地球温暖化を抑制するための基金に貢献すべきだと主張し、反発している。

中国とインドはさらに反論し、米国や英国のような先進国の歴史的な排出量に比べ、中国やインドの排出量増加が最近のことであると主張する。中国、アメリカ、インドは現在における世界最大の温室効果ガス排出国だ。

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