COP28 注目の6つの論点 気候変動に強い社会へ

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COP28 注目の6つの論点 気候変動に強い社会へ

第28回国連気候変動枠組条約(UNFCCC)締約国会議、COP28が、11月30日から12月12日までの2週間にわたって、アラブ首長国連邦・ドバイのエキスポシティで開催されます。COP28の注目の論点は?

2023年11月28日 – Energy Tracker Asia

UNFCCC事務局長のサイモン・スティルは、「今年は軌道修正の年にしなければならない。COP28での力強い成果は、気候変動対策と持続可能性のアジェンダの両方を支えることになる」と7月に述べました。気候変動に関する国際交渉の重要な局面に際し、国際社会には気候変動対策を行動に移すよう圧力が高まっています。特に今年のCOPは、世界の気候適応、緩和、資金調達について前進する重要な足がかりとなると考えられています。

COP28の目標

COP28には、「技術とイノベーション」「気候変動資金」「インクルージョン」「気候変動の最前線に立つコミュニティの支援」という4つのテーマがあり、会議の目標もこれらのテーマを軸としています。

1. 第1回「グローバルストックテイク」

パリ協定では、5年ごとに「グローバルストックテイク」を行うことになっており、第1回グローバルストックテイクの時期は、COP28と重なっています。

グローバルストックテイクとは、温暖化を1.5℃未満に抑えるというパリ協定の目標に向けて、世界が気候変動対策についてどのような状況にあり、どのような進展があったかを幅広くレビューするものです。さらに、気候変動対策におけるギャップを特定し、今後の解決策を策定する機会でもあります。

各国がグローバルストックテイクを経て気候目標を引き上げる「ラチェットメカニズム」 出典: Carbon Brief
各国がグローバルストックテイクを経て気候目標を引き上げる「ラチェットメカニズム」 出典: Carbon Brief

パリ協定に組み込まれたラチェットメカニズムに基づき、グローバルストックテイクを経て各国は、温室効果ガス削減目標であるNDC(国が決定する貢献)を再評価し、より強固な目標を策定することが求められます。各国は、排出削減を加速させ、適応のための資金を増やすことを公約しなければなりません。

2. 再生可能エネルギー目標の引き上げ

より強固なNDCを達成するためには、再生可能エネルギーの容量を急速に増やす必要があります。再生可能エネルギーの導入は増加していますが、さらなる導入が必要です。PWCの報告書によると、温暖化を1.5℃未満に抑えるためには、前年比で17.2%の脱炭素化が必要であり、これは過去20年間の世界平均の12倍のペースとなります。

COP28の議長は、2030年までに再生可能エネルギー容量を3倍、エネルギー効率を2倍、水素生産量を2倍にすることを各国政府に求めています。これらの目標の達成を宣言することが、COP28の主要な目標です。

3. 気候変動資金調達目標の達成

2009年のCOP15で、先進国は2020年までに年間1,000億米ドルの気候変動対策基金を調達し、発展途上国に提供すると約束しました。この目標はまだ達成されていないものの、経済協力開発機構(OECD)は、2023年には達成される可能性があると見積もっています。COP28はそれを確実にするための場となり得ます。

出典: OECD

この目標は2025年に期限切れとなり、2025年以降の目標として新たな気候変動基金に関する新規合同数値目標(NCQG)が策定される予定です。策定は2022年から2024年の間に行われることになっており、COP28はこのプロセスにおける3つのCOP会合の1つです。UNFCCCは、先進国がNDCを半分達成するだけでも、2030年までに6兆米ドル必要だと見積もっています

4. 資金ギャップを埋める

先進国が途上国に提供する1,000億米ドルの気候変動対策基金以外にも、全体的な気候変動対策に必要な資金は、まだ調達できていません。議長に指名されたスルターン・アル・ジャーベル氏は、COP28の優先目標として資金調達状況の変革を掲げています。この変革には、開発銀行から民間セクターまで、あらゆるレベルでの取り組みが求められます。

国家レベルでは、政府は民間セクターの参加を促す政策を実施する必要があるでしょう。例えば、強固で信頼でき、規制された炭素市場を発展させることで、気候変動対策に向けた民間投資を呼び込むことが期待できます。一方、国際開発銀行は、必要な資金調達規模を満たすために、リスクを低減し、より効率的に機能するよう、資本増強を行う必要があります。

もうひとつの重要な焦点は、発展途上国における脱炭素化のための資金調達を支援する、公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)の発展を促進することです。グループ取引のような戦略は、実行可能な道筋と考えられます。

5. 「損失と損害」基金の運用開始

COP27で得られた大きな成果の一つは、気候変動の影響を受ける途上国に資金援助を行う「損失と損害」への基金の設立でした。設立を受けて、基金の仕組みに関する提言を作成するための暫定委員会が設置されました。COP28では、各国が基金の仕組みと資金分配の戦略について合意ことが期待されます。

「基金の仕組みが整っていることは一つのポイントだが、実際に資金が拠出されて初めて本格的な運用が可能になる。年末にドバイで開催されるCOP28は、損失と損害に対する基金と資金調達の取り決めを実現し、運用を開始する場である」スルターン・アル・ジャーベル COP28議長

6. 気候変動に強い食料システム

気候変動が進行する中、世界の食料システムは、増大する食料需要と気候の変化に適応しなければなりません。COP28では、政府、企業、農家が一堂に会し、気候変動に強い食料システムの開発に向けて協力することが期待されます。

さらに、各国は「レジリエントな食料システム、持続可能な農業、気候変動対策に関するCOP28宣言(COP28 Declaration on Resilient Food Systems, Sustainable Agriculture and Climate Action)」に署名するよう求められています同宣言は、農業を気候変動対策の中心に据え、各国が農業戦略をNDCと整合させることを求めています。

COP28で成果を最大化する

COP28の各目標はいずれも、世界の気候戦略にとって不可欠なものです。

国連気候変動会議COP28では、各国の政府、ステークホルダー、民間セクターが、長期的な気候変動対策とエネルギー転換のための具体的な決定を下すため協力することが求められます。

地球温暖化の影響はすでに世界中で現れており、早急な行動は、単に望ましいことではなく、必要不可欠なものとなっています。COP28は、世界の意思決定者が有意義な対策を固め、制定するための極めて重要な機会であり、断固とした行動を取る必要に迫られています。

※この記事は、2023年10月26日にEnergy Tracker Asiaに掲載され、Energy Tracker Japanが許可を得て日本語に翻訳したものです。(元記事はこちら

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