2022年、日本の大企業は気候変動に対するコミットメントを守っているか

858

2022年、日本の大企業は気候変動に対するコミットメントを守っているか

2023年7月10日 – ヴィクトル・タチェフ / Energy Tracker Asia

最終更新日:2023年8月22日

日本企業の気候変動やサステナビリティに関連する公約は、政府のコミットメントを反映したものとなっています。書類上それらは野心的に見えるものの、現実には、ミクロレベルでも、産業レベルでも、やるべきことはたくさんあります。

日本企業は、日本が進める脱炭素化の原動力であり、それは全世界に影響を与えます。日本の気候変動に対するコミットメントは野心的なように思えますが、現実には具体的な結果が得られていないことがわかります。世界でも有数の炭素集約型経済が変わるには、結果を出し始めなければなりません。日本の最大手企業は、もはや公約やコミットメントの陰に隠れることはできません。実際に変化していることを示すエビデンスを出さなければなりません。

日本企業のカーボンフットプリント

日本は、世界第5位の温室効果ガス排出国です。エネルギー転換、産業、輸送などのセクターが、この国のCO2排出量の大半を占めています。

出典:Statista

例えば、日本の電力・熱セクターは、世界のCO2排出量の1.18%を占めています。運輸セクターが0.43%、製造セクターが0.4%です。

例えば、2019年の日本の技術セクターは、2020年のニュージーランド全体よりも多くの電力を消費しています。日本の電力の75%は化石燃料で賄われていることを考えると、これは憂慮すべきことです。

本のセクター別温室効果ガス排出量(2018年)
出典: OurWorldInData

日本企業の気候変動へのコミットメント

近年、日本の最大手企業は、国によるネットゼロコミットメントに沿った気候政策や目標を発表しています。現在、日経225社の40%近くがネットゼロエミッションの公約を掲げています。一方、日本の主要企業の30%近くが、収益や利益とともにグリーン投資を強化する計画を立てています。

三菱重工業は、2040年までにネットゼロオペレーションとネットゼロバリューチェーンの実現を目指しています。住友商事は、2035年までに2019年比で60%の排出量削減を約束し、2040年代後半にはすべての石炭火力発電を停止する公約を掲げています。みずほフィナンシャルグループは、2050年までにカーボンニュートラルを目指しています。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、2050年までに金融ポートフォリオで、2030年までに自社事業でネットゼロエミッションを目指しています。また、三井住友フィナンシャルグループでは、2030年までにネットゼロを目指すとしています。

みずほ、三井住友、三菱UFJといった大手金融機関は、石炭火力発電所への融資を停止すると宣言しています。また、サステナビリティや気候変動に対する積極的な支援を開始する意向を示しています。

日立は、2030年までにすべての事業サイトでカーボンニュートラルを達成することを目標としています。また、2050年までにバリューチェーン全体でCO2排出量を100%削減することを目標としています。東芝は、2030年までにバリューチェーン全体で排出量を50%削減する公約を掲げています。ソニーグループは、米国では2030年、グローバルでは2040年までに再生可能エネルギー100%への移行を計画しています。同社は、欧州と中国ですでにこれを実現しています。しかし、グループ全体の排出量の8割を占める国内事業の脱炭素化は、依然としてハードルが高くなっています。一方、ヤフージャパンや楽天にはこれは当てはまりません。両社は、それぞれ2023年、2025年までに再生可能エネルギー100%に移行する公約を掲げています。

さらに、日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)は、再生可能エネルギーの目標をより野心的に追求するよう政府に要請しました。また、JCLPは、非効率な石炭火力発電所の段階的廃止、新規建設中止、カーボンプライシングの導入などを政府に要請しました。

日本の最大手企業の気候変動へのコミットメントの裏側

多くの日本企業が自らの公約に真っ向から反しています。

三井住友銀行や三井住友信託銀行などの銀行は、JCLPの一員であると同時に、石炭産業への最大の融資者でもあります。日本の機関が石炭に大きな関心を持っているため、日本は最も盛んに石炭に投資する投資家と金融機関のランキングで、それぞれ2位と3位となっています。 

三菱重工業は最近、広野町で石炭ガス化一貫プラント、インドネシアのジャワ島で500MWの天然ガス火力発電システムの建設を完了させました。また、子会社の三菱電機は、インドネシアで500MWの天然ガスタービンの商業運転を開始しました。その他、三井物産、丸紅、伊藤忠商事、J-POWERなども化石燃料のプロジェクトを支援しています。

住友商事は、CO2排出量を2035年までに60%削減し、2050年までにカーボンニュートラルを目指しているにもかかわらず、EPC請負業者の一つとして、バングラデシュのマタバリ石炭発電所プロジェクトに参画しています。しかし、大きな世論の圧力に押され、同社はプロジェクトから撤退しました。

日本のテクノロジー産業も気候変動へのコミットメントを失速させています。2050年までにCO2排出量ネットゼロを達成することを約束しているにもかかわらず、キヤノンのシンクタンクであるキヤノングローバル戦略研究所(CIGS)は、気候変動の否定を広め、気候科学への疑念を植え付け、誤った情報を流し、化石燃料を推進していることが明らかになりました。  

グリーンピースの報告書Race to Greenによると、東芝やキヤノンなどの企業は、いまだに再生可能エネルギーの目標を掲げていないことがわかりました。ソニーやパナソニックなど、再生可能エネルギー100%を掲げる企業の目標は、2040年から2050年という遠い未来に設定されています。

さらに、カーボンニュートラルの目標を政府に報告することが義務付けられている、エネルギー消費量の多い日本企業の8割以上が、まだカーボンフリー化のロードマップを策定していません。

出典:Nippon

日本企業はさらに上を目指すべき

日本が2021年までに国際的な石炭融資を廃止するという公約を反故にしたことを考えると、営利企業セクターに模範を示すように求めるのは非現実的かもしれません。官民セクターは、日本の温室効果ガス排出量の80%(世界第5位)を占めていることから、早急な対策が必要です。政府と企業セクターが一丸となって有意義な進歩を遂げなければ、日本のネットゼロコミットメントは実現しないでしょう。

※この記事は、2022年5月16日にEnergy Tracker Asiaに掲載され、Energy Tracker Japanが日本語に翻訳したものです。(元記事はこちら

関連記事

すべて表示
日本の水素戦略 – カーボンニュートラルへの遠回り
日本の風力発電の利点と将来性
円安が続く原因と日本経済へのメリット:再エネ投資の好機到来
不確実性を煽るのはやめよう:なぜアジアはLNGトラップを避けるべきか

読まれている記事

すべて表示
						
アジアにおけるLNGの経済的意義は崩れつつある
レポート『褐炭、グリーンウォッシュー 水素エネルギーサプライチェーンプロジェクトがもたらす真の排出のインパクト』
世界的なエネルギー危機でフィリピンでのLNG計画に支障か
2022年のアジアのLNG需要の減少が産業成長の課題を浮き彫りにする