化石燃料を利用した技術で固められた日本の「グリーントランスフォーメーション」(GX)

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化石燃料を利用した技術で固められた日本の「グリーントランスフォーメーション」(GX)

2023年6月14日 – ティム・ダイス / Energy Tracker Asia

日本はグリーンエネルギートランフォーメーションを推進していますが、これは名ばかりのもので、依然として液化天然ガス(LNG)、石炭、化石燃料ベースの技術が含まれています。また、日本は5月のG7開催までに、正式な石炭の削減・廃止計画を早急に打ち出す必要があります。

世界第3位の経済大国であり、最も炭素集約度の高い国の一つである日本は、グリーントランスフォーメーション(GX)を掲げています。しかし、日本のグリーントランスフォーメーション計画は、依然として化石燃料に大きく依存する内容となっています。

5月19日から21日にかけて広島で開催されるG7サミットを前に、4月15日から16日にかけて、札幌で気候、エネルギー、環境に関する閣僚会議が開催されました。これは、「現実的なエネルギー転換」を推進するために予定されたものです。しかし、このような催事を開催することで、国としての気候変動に対する責任を回避することはできません。

石炭の使用により、日本政府は、2035年までにG7グループの各電力セクターを脱炭素化するという2022年のG7の枠組み合意の前倒しに消極的です。

また、G7は、2050年までにネットゼロエミッションを達成することを約束し、先進7カ国の脱炭素化への取り組みに焦点を当てる予定です。G7グループには、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国が含まれます。

日本は依然として石炭を支持

少なくとも2030年までは、日本の発電需要の約19%を石炭が占めるとされています。また、政府は燃料の排ガスに対する懸念を払拭しようとしています。いずれは石炭の使用量を減らし、原子力発電に軸足を戻すと主張しています。

しかし、政府は未だに迷走しているようです。

石炭の削減と廃止に向けた明確な道筋を正式に示すことができずにいます。2011年の福島原発事故後に導入された安全規制の強化や地元の反対運動により、国内の原子力発電所のほとんどが停止したままとなっており、問題は深刻化しています。

ここで、次のような疑問が浮かんできます。原子力発電は今の日本にとって適切なのでしょうか?2022年、原子力が日本の電力供給に占める割合は8%に過ぎません

さらに、国際エネルギー機関(IEA)によると、日本の総発電量の約88%を化石燃料が占めています。これはIEA加盟国の中で6番目に大きい割合です。

日本のグリーントランスフォーメーション政策

さらに、最近承認された日本のグリーントランスフォーメーション戦略(GX)は、その大部分が化石燃料技術に基づいています。これには、LNG、アンモニア混焼、ブルー水素開発、炭素回収・貯蔵(CCS)などが含まれます。

ガスは発電に使用すると、石炭の50%の排出量を出します。したがって、ガス火力発電所はクリーンとは言い難いものです。また、ガスはメタンガスの主要な排出源でもあります。米国環境保護庁(EPA)によると、メタンは二酸化炭素の25倍も環境中に熱をこもらせるとされています。

化石燃料技術の欠点

日本のブルー水素開発は、しばしば政府によって気候変動の突破口として宣伝されていますが、実際には憂慮すべきものです。ブルー水素 は、CCS技術を用いながら天然ガスを燃焼させて製造します。

CCSはまだ大規模な実証がされておらず、高価な技術となっています。また、CCSシステムは非常に多くのエネルギーを必要とします。封じ込められ、貯蔵された排出ガスが漏出することにより、重大な環境問題を引き起こすというエビデンスが集まってきています

化石燃料の使用への対応として、18カ国140以上のグループが、日本の岸田文雄首相に対し、化石燃料の使用の促進・拡大を停止し、アジア全域の再生可能エネルギーへの移行を遅らせないよう求める書簡を提出しました。

日本の気候変動対策は、化石燃料を利用した技術による成果、また、それが環境にもたらす害についての誤った仮定に基づいています。つまり、これは単なるグリーンウォッシングの一例に過ぎません。

日本から東南アジアへの圧力 

さらに悪いことに、日本のGXは、近隣の東南アジアに同様の政策や化石燃料を使った技術の採用を迫るために利用されています。

その一環として、今後10年間で1.1兆米ドル以上の官民資本を投入し、日本の22の産業セクターを抜本的に見直すとされています。また、東南アジアの協定国には、技術支援や財政支援を行うとしています。

この取り組みは、日本政府が東南アジア全域で「クリーンエネルギー」に資金を提供する活動を始めてから2年足らずで実現しています。この100億米ドル規模の計画には再生可能エネルギーも含まれていますが、LNGインフラの開発とガス火力発電所の資金調達も同時に進めているため、的外れな内容となっています。

この2年間で、世界のLNG推進はさらに勢いを増し、2024年には420億米ドルの投資額でピークを迎えるとされています。

エネルギー経済学は再生可能エネルギーを支持

再生可能エネルギープロジェクトのコストは、化石燃料を使用する発電プロジェクトとほぼ同等まで下がってきています。多くの場合、むしろ再生可能エネルギーの方が安価になっています。したがって、日本がガス政策を東南アジアに押し付ける必要はありません。

また、日本の石炭使用量にも問題があります。石炭を燃やすと大気中に二酸化炭素が放出され、地球温暖化、気候変動の主な原因となります。石炭を燃やすことで発生する窒素酸化物や硫黄酸化物は、空気中の水分と反応して 酸性雨を発生させます。

日本は今すぐ行動すべき

つまり、日本政府は石炭問題に正面から取り組む必要があり、今すぐにでも行動すべきです。5月開催されるG7会議までに、電力セクターから石炭を排除する具体的で検証可能な計画を打ち出す必要があります。

これができなければ、G7全体の排出削減目標や、2030年までに電力の脱炭素化を目指すという2022年に設立されたグループの枠組みを揺るがすことになります。

※この記事は、2023年4月19日にEnergy Tracker Asiaに掲載され、Energy Tracker Japanが日本語に翻訳したものです。(元記事はこちら

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