日本の天然ガス依存:G7に対する責任

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日本の天然ガス依存:G7に対する責任

2023年6月5日 – エリック・クーンズ / Energy Tracker Asia

最終更新日:2023年6月7日

日本は天然ガスの90%以上を輸入に頼っています。そのため、世界のLNG市場や情勢によって供給やエネルギーコストが左右されます。ロシアの天然ガスに依存していることから、2022年にこの責任に焦点があてられました。強固な再生可能エネルギーグリッドを開発することが、現実的・長期的な唯一の解決策です。

日本は世界第7位の天然ガス消費国で、資源に乏しいため、国内の需要を満たすために輸入に頼っています。世界のLNG輸入量の22%が日本に流れており、最大の天然ガス輸入国となっています。天然ガスなどの化石燃料への依存度の高さが、日本が一国として世界第5位のCO2排出量があり、世界全体の年間排出量の2.5%以上を占めている主な理由です。

出典:憂慮する科学者同盟

ガス使用量は1980年代から一貫して増え続けており、2011年に急増しました。福島の原発事故後、54基の原子炉が閉鎖されました。その直後から30%のエネルギーギャップが生じ、それを化石燃料で埋め合わせました。2021年現在、国内の総エネルギーの5分の1、電力の3分の1以上が天然ガスでまかなわれています。

日本はG7加盟国として、化石燃料への依存をなくすことと、必要な低炭素エネルギー能力を開発することの両立を図っています。ほとんどのG7諸国が2035年までの電力セクターの脱炭素化を公約に掲げる一方、日本では最優先事項として天然ガスへの新たな投資支援が検討されています。この2つの政策は相容れないものであり、天然ガスへのさらなる投資はエネルギー転換を遅らせます。

今年、日本で開催されるG7において、天然ガスが大きな論点になることは間違いありません。

日本はどのように天然ガスを調達しているのか

天然ガスは、日本の総エネルギー消費量の21%を占め、90%以上が輸入でまかなわれています。天然ガスの輸入量は、福島原発事故後の急増を経て2014年にピークを迎え、その後は微減にとどまっています。

日本の天然ガス純輸入量(2000〜2020年)出典:IEA
出典:IEA

2022年時点で、日本の天然ガス輸入量は7,199万トンで、前年比3.1%減となりました。しかし、政策の転換は減少の要因の一つに過ぎません。主な要因はエネルギー価格の上昇です。日本の天然ガス輸入の総支出は、2021年から2022年にかけて97.5%増加しました。

国内生産

国内生産量は消費量のわずか2.2%と極めて少なくなっています。原因としては、天然ガス田が非常に少ないこともありますが、利用可能な多くのガス田が未開発のままであることが挙げられます。

国としては、エネルギー自給率向上の一環として、国産ガス生産を推進しています。これには、28億立方メートルの天然ガスを供給できる国内最大級のガス田の開発への資金援助が含まれています。稼働すれば、日本の天然ガス総需要の1.2%を供給することができます。

しかしながら、これらのプロジェクトをもってしても、天然ガスの輸入が日本のエネルギーグリッドの中心であることに変わりはありません。 

日本のLNG輸入に関する統計

オーストラリアは日本に最も多くのLNGを輸出する国であり、ここ10年で着実にシェアを伸ばしています。2022年、オーストラリアは日本に天然ガス総需要の43%を供給し、2021年から15%増加しました。総額は190億米ドルを超え、オーストラリアのLNG輸出全体の37.9%を占めています。このような依存関係は、生産量や需要の減少に脆弱な両国にとって課題となります。

カタール、マレーシア、米国、ロシアが残りのLNG輸入量の大半を占めています。

日本の液化天然ガス基地とインフラ

261,167kmのパイプラインからなるガスネットワークに接続する輸入ガスを受け入れるために、日本には37基のLNG受入基地のネットワークが整備されています。しかし、ガスネットワークについては、地域の電力会社やガス会社がほとんどのパイプラインを所有しているため、比較的断片的な状態となっています。諸外国のような単一の送電システム事業者は存在しません。

日本のLNGインフラ。出典:IEA
日本のLNGインフラ 出典:IEA

現在の国全体のLNG貯蔵容量は1800万立方メートルで、36日分の供給が可能です。

なぜ日本はガス料金が高いのか

国内の天然ガス生産量が非常に少なく、ガスを輸入するための直接のパイプラインも存在しないことから、これまでガス料金が安かったことはありません。一方で、供給や地政学的事象など多くの要因に左右される世界のLNG市場に大きく依存しています。

ガス輸入価格が過去最高水準に達し、消費者が支払う電気料金を押し上げるなど、一部の人がエネルギー危機と捉えるような状況が進行しており、大きな懸念材料となっています。

需要に追いついていない供給

最近のガス料金高騰の主な原因は、需要と供給の関係にあります。

まず、ロシア・ウクライナ戦争により、世界的に天然ガスの入手が難しくなっています。ロシアは世界第2位の天然ガス生産国ですが、2022年には生産量が約12%減少しています。これにより、2022年にはLNG価格が過去最高水準まで上昇しました。 

また、日本は、2022年の夏にガスを購入し、冬季の需要増に備えました。これにより、世界のLNG供給がさらに制限され、価格のさらなる高騰を招きました。一方、アジア全域でLNGの需要は着実に増加しています。また、中国の経済活動が回復し、新型コロナウイルス関連の規制が緩和されれば、アジアの需要は供給をさらに上回るでしょう。2023年中の中国の需要の伸びを35%とする試算もあります。

出典:Wood Mackenzie

日本のエネルギー自給率

日本は国内の化石燃料資源が限られているため、昔からエネルギー問題で苦労してきました。その結果、エネルギーの輸入依存度が高く、市場価格の影響を受けやすくなっており、これが同盟国にとっても問題となる可能性があります。このことは、ロシア・ウクライナ戦争でG7諸国がロシアからのLNG輸入を激減させたことで浮き彫りになりました。日本はその後のエネルギーギャップを埋めることができず、諸外国に追随することができなかったのです

しかし、再生可能エネルギーが化石燃料と同等のコスト競争力を持つようになった今、状況は一変する可能性があります。日本は、島国として世界第3位の洋上風力および地熱エネルギーのポテンシャルを持っています。これらの再生可能エネルギー資源を開発するために政府が支援を行うことで、エネルギー自給率向上と、レジリエントな再生可能エネルギーグリッドを構築することにつながります。

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